Project Story.02 プロジェクトストーリー

油圧四輪駆動開発プロジェクト
HFWD
(油圧四輪駆動用フロントアクスル)

02

KANZAKIの油圧技術と歯車技術を活かして
オンリーワンの製品を

自動車の4WDといえば、悪路での走行性能や安定性に優れているイメージがあるでしょう。
安定した走行は、ドライブシャフトで車両の前後を繋ぎ、車輪すべてにエンジンからの動力が伝わっていることで生み出されています。
それなら、必ずしもフラットではない、時には急斜面もスムーズに駆け上がるであろう芝刈り機が4WDだとどんなにいいか、と考える人も多いのではないでしょうか。
ところが乗用芝刈り機は車体の下に芝を刈る機材を搭載するため、そんな単純な問題ではないのです。
そんななか、KANZAKIの強みである油圧技術と歯車技術を活かしてオンリーワンの製品をつくろう、ということで立ち上がったプロジェクト。
開発秘話を語っていただきました。

取材メンバー

開発部 商品開発部
第二商品G

I.K.

1991年入社。
入社以来開発業務に携わり続け、芝刈り機、農業機械、ユーティリティビークルなど数多くの開発プロジェクトを経験。
現在は主席としてグループ貢献活動も担う。

開発部
試験G

H.H.

1992年入社。
入社以来、試験業務に従事。芝刈り機用の油圧トランミッション(IHT)をはじめ、様々な開発プロジェクトの試験業務を経験。
現在は、ユ-ティリティビークル用のトランスミッションの試験を中心に、若手に交じりながら、まだまだ活発に業務奮闘中。

新しい価値を生み出すことを目標に

I.Kさん

このプロジェクトはKANZAKIが自社の強みを活かして、他にはない新しい価値を生み出そうという、提案型の製品開発としてスタートしました。

H.H.さん

従来の4WDシステムでは、ドライブシャフトで車両の前後を繋ぐのが一般的ですが、これが芝を刈るためのモアの昇降時にどうしても邪魔になってしまっていたのです。
そのため、4WDの芝刈り機は市場にあまり普及していませんでした。
そこで、ドライブシャフトを油圧に置き換えるというアイデアが生まれました。

I.Kさん

開発にあたって、軽量化は最重要課題でした。
軽量化を図るためには、ケースにどんな素材を使用するのかが大事になります。
初号機に使用したアルミ製は強度が不足していました。
試験中に真っ二つに折れてしまうという問題が発生し、頭を悩ませました。

H.H.さん

そこからがまさに試行錯誤の連続でした。
ケースにかかる応力を細かく計測し、データを集め、構造解析を繰り返しました。
そして、何度も試作品を作り、壊しては改良するというプロセスを経て、最終的に壊れないケースを作り上げることができました。

I.Kさん

材質変更についても検討しましたが、芝の上で使われるという観点から軽量化にこだわり、アルミという素材は維持しつつ熱処理で強度UPすることにしました。

H.H.さん

油圧システムにおいても課題がありました。
最初に開発したものでは、前輪と後輪の回転数が油の流量と上手く一致せず、タイヤ間で摩擦が生じてスムーズに走行できないという問題が起きました。
これに対して、チェックバルブという部品を追加することで、前後輪の回転数のずれに対応して油をタンクから補充できる仕組みを導入し、問題を解決しました。

I.Kさん

製品として完成してからも生産するときに問題が生じました。
HFWDに使用される傘歯車は、試作段階では歯を切る工具で加工していたのですが、量産時には鍛造という型で成形する方法に変わったため、歯車の製造において型の先端部分まで金属が十分に回りこまず、歯先が丸まってしまいました。
相手の歯車との噛み合わせが悪くなって大きな騒音が発生してしまったのです。
これについては、鍛造の方法を改善し、歯先までしっかりと金属が充填されるように調整することで、騒音を抑えることができました。

各部門の協力を経て製品化へ

H.H.さん

HFWDの開発プロジェクトは、KANZAKIとしてほぼ初めてとなるコンカレントエンジニアリングの手法を取り入れ、開発部や資材部だけでなく、営業部、生産技術部、経理部など、多くの部門が一体となって製品化に向けて積極的に協力しました。
コストダウン活動において営業部はメーカーを訪問し販売目標を力強く伝え、生産数量を増やしていくことを約束し、生産技術部は製造コストを下げるための工程をメーカーと共に検討するなど、各部門がそれぞれの専門性を活かして努力してくれました。

I.Kさん
関連部門の「何とかして商品化したい」という強い思いと積極的な協力があったからこそ、このプロジェクトが成功したと感じています。
一人ではできないことも、共感してくれる人が増えれば実現できると実感しました。
H.H.さん

HFWDの開発を通じて歯車と油圧に関する多くの知識を習得できたこと、そして過酷な使用状況を想定して試行錯誤しながら試験を実施する中で、考える力が養われたことに感謝しています。

I.Kさん
HFWDは、その優れた性能が市場で高く評価され、特に丘陵地の多いヨーロッパ各国で広く採用され、競合他社の追随を許さないほどの成功を収めています。
H.H.さん

国内のメーカーからも引き合いがあり、果樹園で使用するような悪路に強い特殊な芝刈り機(草刈り機)においても高い走破性が実証されたとき、開発時の苦労が報われたようでとてもうれしかったです。
HFWDはまさに、KANZAKIの技術力と関係する全員の熱意が結実した製品。
ここでの経験は、挑戦を続けるKANZAKIの代表的な成功事例となっています。

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