Project Story プロジェクトストーリー

無段変速トランスミッション開発プロジェクト
I-HMT
(ハイドロメカニカルトランスミッション)

01

操作性と伝達効率を融合した
画期的なトランスミッションを開発

「変速機」とも呼ばれており、自動車やトラクタなどで使用されています。
エンジンから発生する動力を車輪に伝える働きをするもので、坂道ではトルクを上げる、平坦な道ではスピードを上げるといったように、エンジンの動力を変化させて出力することができます。
通常、遊星ギヤを使用して、コンパクトかつ高トルクを実現するのですが、ここでは、その遊星ギヤを使用しない無段変速小型のHMT(ハイドロメカニカルトランスミッション)、I-HMTの開発秘話を紹介します。
油圧式無段変速機の操作性と有段変速機の伝達効率を融合した画期的なトランスミッションです。

取材メンバー

開発部 商品開発部
第二商品G

T.T.

1998年入社。
入社から現在まで開発部に所属し、油圧機器の設計業務に従事。
今回紹介するI-HMTやHSTをメインで設計を担当。
ヤンマーグループを始めとした国内外のお客さま仕様に適したHST・HMT等の商品及びソリューションを提案活動中。

ヤンマーのトラクタに搭載されているI-HMTの特徴を教えてください。

T.T.さん

I-HMTは、長年の技術と経験が凝縮された、まさに次世代のトラクタにふさわしいコア技術です。
従来のHMT(ハイドロメカニカルトランスミッション)では、動力の流れを分割・統合するために複雑な遊星ギヤ機構が用いられることが一般的でしたが、I-HMTではこの遊星ギヤ機構を用いないHMT化に成功しました。
その結果、従来の同容量HSTに比べ、30%の小型化を達成し、同時に損失を10%も低減することに成功しました。(当社製品の調査結果より)

遊星ギヤを使わないことのメリットは?

T.T.さん

遊星ギヤ機構は複雑で部品点数も多くなりがちですが、I-HMTでは、よりシンプルな油圧制御システムと機械要素を組み合わせることで、効率的な動力伝達とコンパクト化を両立させています。
これにより、トラクタの設計自由度も高まり、より使いやすい機械の開発に貢献していると言えます。

この開発プロジェクトはヤンマーからスタートし、商品化時にKANZAKIへ設計・製造移管されて量産化が進められたそうですが、この過程でどのような役割を担ったのでしょうか?

T.T.さん

新規機構の採用は、多くの技術的な挑戦を伴いました。
このI-HMT製品化の挑戦をやり遂げるため、KANZAKIは油圧機器の製造において長年の経験と実績があり、最適でした。
量産化移行では、確認試験で破損する部品や量産コスト改善対応など様々な問題に直面しました。
耐久性・信頼性向上のために摺動部に特殊な表面処理技術を採用したり、ベアリングの寿命改善や油圧制御の応答性改善のために各部品寸法・公差を何回も試作確認したりといった対策を取りました。
単体耐久試験やトラクタ評価試験を実施することで、その信頼性を徹底的に検証しました。
コストと品質向上の両立で苦労しましたが、資材部・生産部・品質統括部が三位一体となり、I-HMT専用組立ライン及び運転装置を新設してその工程を協議することで高品質な製品安定供給体制を構築することが出来ました。
私は不適合品を出さないため、サプライヤとも連携を密に行い量産設計に努めました。

開発を通じて得られた財産とは?

T.T.さん

I-HMTの開発は、多様な専門知識を持つ技術者たちが集結し、それぞれの強みを活かして課題を解決していくという、まさにチームワークの賜物でした。
この経験を通じて、新しい表面処理技術、熱処理技術、材質に関する深い知見を得ることができました。
また、グループ内やサプライヤとの強固な信頼関係とネットワークを築くことができ、これは今後の設計・開発における大きな推進力となると考えております。
I-HMTは現在もヤンマートラクタの主要コンポーネントとして使用されており、今後もさらなる改良と新たな技術革新に向けて進化を続けていくでしょう。

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