KANZAKIの主力商品であるトランスミッションは、限られたエンジンの動力を、前進後進に切替えたり、スピードを変えたり、駆動力を増減させて、車輪や作業機に伝えるものです。その中で、エンジン動力の伝達効率と変速時の操作性というのは、相反する課題といえます。双方を両立させる為に、これまで様々な変速方式が考案されてきました。
例えば、メカニカルミッションではギアスライド→コンスタントメッシュ→シンクロメッシュと操作性の向上が図られてきましたが、どの方式も発進・増速にクラッチ操作が必要です。
一方で、油圧ポンプと油圧モーターを組み合わせた無段変速機(HST:Hydro Static Transmission )は停止から発進・増速までクラッチ操作が不要で、切れ目の無いスムーズな走行が可能ですが、伝達効率はメカニカル方式に比べればはるかに劣り、構造も複雑です。
メカと油圧の融合を標榜するわが技術陣は、両者のいいとこ取りに挑戦してHMT: Hydro Mechanical Transmissionを造り出しました。欧米では大型機に種々の形で搭載されている技術ですが、小型化して乗用田植機や100馬力以下のトラクタに搭載された例はもちろん日本初で、世界的にも稀なトランスミッションです。
このHMTは、小容量のHSTと遊星ギヤを組合せたことで、停止から発進・増減速がクラッチ操作無し、レバー1本、アクセルペダル1個で可能です。加えて、最も使用される速度域では、HSTを使わずに動力のほとんど全てをギヤ伝達とすることができ、HSTのみの伝導系と比べればメカニカルミッションに近い伝達効率が得られます。
さらにHMTは、電子制御と組み合わせることで、一定速度を維持したり、負荷に応じての速度制御(自動減速)等、さまざまな機能を持たせることが可能となります。
伝達効率と操作性を追求して、次はどんなものが提案できるか、挑戦は今も続いています。
HMTユニット KC-80HAA の紹介